記憶欠損

この激しい頭痛とともに、


目を醒ませば、そこはいつもの自分の部屋ではなく、

奴の部屋。


ケラケラと笑って、あたしを見ている。


「あったま、いてぇわぁ~・・・・・。」と起き上がるあたしに、


奴はいつものように可愛らしく笑って、


「スッキリしたかね?軍師殿?」
と、ちょっと小馬鹿にしたように笑いながら、冷たい水を差し出す。


何で、こんなに頭が痛い?


どうやってここまで来たんだろう。


最後の記憶は朝のベッドの中。


時計を見ると今は同じ日の夜。


すかさず携帯電話を見るがいくらか仕事の関係の着信があるだけ。



何だ、この言いようのない頭痛は。


でも妙だ。やたら胸がスッキリする。


明日の仕事のことばかり考えている。


「明日のエアーは朝一番のフライトでしょう?間に合うの?」怪訝そうにあたしの顔を覗き込んで、聞く。いつものことだ。


「間に合うさね。この頭痛の原因さえわかればね。あたしは、ここまでどぉやって来たの?」


ジェスチャーだけで何も答えない。ずるい奴だ。


いつもそう。肝心なことは何も言わない。

でも、背中を見ていたら分かる。奴の女よりあたしは奴の考えていることが分かる。


あぁ。生きていくことは何かを忘れていくこと。


奴の背中を見て思った。


忘れられる記憶があるなら忘れてしまいたい。


それが許されるなら。


で、

実際、記憶がないわけで、

なんなんだろう。

酒を飲むなんて、ありえない。最後の記憶は朝だったし。



なのに言い知れぬこの頭痛。


なんなんだ・・・・。


奴は何も言わない。いつもコロコロと笑っているだけ。



そぉいえば、こないだ怒ってたっけ。


だから日本人は嫌いだ。とか言ってたからビンタしたような。


国や思想は変えようのないもの。それを論評してはならない。






しかし、この頭痛・・・・・。


TVでは昨日やってたニュースと同じ内容のものがやっている。


気分は時が激しく進んだよう。


でも別に何も変わってない。


とりあえず、痛み止めの薬でも飲んでおくか。






きっと、脳の中をハッキングしたに違いない。


奴ならやりそう。くだらないことが大好きな奴だし。


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